【レポート】BlockChainJam

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10月21日、時代の最先端を走るブロックチェーン企業が集まるイベントBlockChainJamが東京の六本木ヒルズにて開催された。

本イベントは三部構成で行われ、第一部では、公認会計士による各国の暗号通貨に関する税金事情や、プログラマーによるイーサリアムに関する技術的な話、ウォレットやクロスチェーンへの事業投資をするエンジェル投資家からの、ビットコインの成り立ちやブロックチェーンを俯瞰的に見た話など、どれもなかなか聞くことのできない貴重な内容が伺えた。

ビットコインが抱える問題

現状、ビットコインが抱える問題としてよく挙げられるのが、何と言ってもスケーラビリティとプライバシーに関してだろう。

本イベントでも、これらの問題に関しては幾度となく議論が飛び交った。

ビットコインは非常に匿名性が高いと言われるが、全てのトランザクションを追えば、誰が誰にいくらのビットコインをいつ送金したのかが世界中に公開されるため、擬似的な匿名性でしかないとも言われている。

これに関して、Monacoin(モナコイン)の取引所の開発・運営を行った経歴のあるフレセッツ株式会社のCEO日向理彦氏は、ビットコインとクレジットカードのトランザクションの違いなどを交えながら以下のように説明をした。

クレジットカードのVISAは1秒間に平均2,000回、混雑時では56,000回もの取引を処理することができますが、それに対してビットコインは1秒間に平均で8回と、非常に少ないことがわかります。これは、ビットコインのブロックサイズが1Mbpsであるからで、サイズを大きくすれば問題解決ができるわけです。様々な意見があったものの、ハードフォークをしてビットコインキャッシュを作り、ブロックサイズに関して解決はしました。しかし、ブロックサイズを上げていくと、今度はハードディスクの容量やネットワーク帯域を使ってしまうことになるので、やはりライトニングネットワークなどのオフチェーンを使って実質的なトランザクション数を上げていくしかないでしょう。ビットコインのコアディベロッパーらは、ブロックサイズの引き上げには否定的で、あくまで現状の1Mbpsで続けようという意見が多いようです。

スケーラビリティ問題について語る日向氏

また、同氏はビットコインのプライバシー問題に関しては、CoinJoin、リング署名、Confidential Transaction、TumbleBit、zk-SNARKなど、様々な最新の暗号技術を使うことにより、少しづつ解決していくだろうとの見解を示した。

第二部では、ブロックチェーンを利用した各プロジェクトによるプレゼンテーションが行われた。
プレゼンテーションを行ったのは下記の6つのプロジェクト。

ZILLIQA(ジリカ)

Cosmos(コスモス)

Omise Go(オミセゴー)

0x(ゼロエックス)

NEM(ネム)

Enigma(エニグマ)

プロジェクトの特徴やロードマップの状況のほか、各プロジェクトに採用されているシステムの技術についても様々な資料を用いながら、詳細が説明された。

各プロジェクト登壇者によるパネルディスカッション

第三部では、それぞれのプロジェクトの登壇者がパネリストを務め、モデレーターはHashHubの平野氏が務めた。
いくつかのテーマを基に、各パネリストは自身の見解を述べ、議論を交わした。

スケーラビリティの課題と解決策

まずテーマとして挙げられたのは、スケーラビリティの課題と各プロジェクトでなぜその解決方法を選択したのかについて。
それぞれのプロジェクトがコンセプトとして掲げているものは異なっていても、スケーラビリティについての問題解決は意識をしているようだ。

中でも、スケーラビリティについての問題解決を中心課題として挙げているZILLIQAのオン氏は、シャーディングを採用している理由として「ブロックチェーンは全ての人が自由に参加すべきであると思っています。」と述べたうえで、「ZILLIQAのシステムでは、トークンを保持していなくても投票に参加出来たり、セキュリティについても一定の高さを保持することが可能です。」とシャーディングのメリットについて述べた。

また、モデレーターである平野氏の「もしもまた、ビットコインが高騰してスケーラビリティ問題による大きな送金の遅延が起こったらどうなると思いますか。」という問いかけに対して、Tezos(テゾス)のヴィンセント氏は「より多くの人が他のブロックチェーンへ移っていくと思います。同時に他のチェーンの魅力は上がり、注目されるかもしれません。」と語った。

パネリストによるディスカッション

現状の各国の法規制について

日本だけに限らず、多くの国で暗号通貨・ICOについての規制が広がっているが、パネリスト達の国でも規制内容や温度感は大きく異なっているようだ。

Enigmaのプレゼンターとして登壇したカナゴールド氏によると、日本の規制は『ガバナンス』と『アンチマネーロンダリング』がキーワードとなっており、特に取引所のガバナンスは従来の金融機関と同様であるべき、という考えが強いとのことだ。
また、フランスでは政府が暗号通貨・ICOを理解した上で規制すべきであると考えており、理解に時間はかかるものの、投資家は、今後正しく規制されることに期待している。

アメリカは、多くの記事でも取り上げられている通り次々に規制が進んでいるが、1940年代に作られた基準を基に進めていることがほとんどだという。
0xのプレゼンターであるホイットニー氏は「現状は暗号通貨に対してのセキュリティの定義が出来上がっておらず、そこが大きな問題だと考えています。」と語った。

一方で、シンガポールはICOに対して非常に寛容であり、ほとんど規制は行われていない。
実際に多くの企業が、中国やアメリカから移動し、シンガポールでプロジェクトを行っている。
オン氏は「おそらく大きな問題が起きない限り、規制は行われないと思います。」と現状を踏まえて自身の見解を伝えた。

パネリストの意見からどの国もまだ規制が定まっていないことが多く、プロジェクト側は慎重に進めている様子が伺えた。

参加者からの質疑応答

パネルディスカッションの最後には質疑応答の時間が設けられ、参加者から「政府の仕事は、スマートコントラクトで代行できる事も多くあると思うが、そういった可能性は考えているか。」という質問が挙がった。

それに対してオン氏は、スマートコントラクトには法的拘束力は無い、としたうえで「私達が望んでいるかどうかではなく、実現をする為には法律の変更が必要になり、非常に時間がかかります。ですから現状は難しいと思います。」と述べた。
また、ホイットニー氏は「企業は政府の仕事を取って変わるのではなく、ルールや規制の変更に協力すべきだと考えています。それがトークンや業界全体の信頼の向上に繋がるのではないでしょうか。」と答え、質疑応答を締めくくった。

 
今回のイベントは、多くの有名なブロックチェーンのプロジェクトが一堂に集結したほか、チケットの販売には、NEMのパブリックブロックチェーンをバックエンドとして開発された『Ticket Peer to Peer』を採用するなど、開催前から注目を集めていた。
実際に当日は、多くの参加者がプレゼンテーションに聞き入る姿が見られ、パネルディスカッションではパネリスト同士の意見交換も活発に行われており、会場全体から参加者のブロックチェーンへの関心の高さが伺えた。

また、今回のイベント主催者である紅谷陽介氏は「ICOや暗号通貨のためのブロックチェーンではなく、ブロックチェーン技術が今後未来をどう変えていくのかを知ってもらう機会を作ろうと考え、イベントの開催に至りました。」とイベント開催の経緯について語ってくれた。

BlockChainJamでは、今後も多くの企業と提携し、イベントを行っていく予定とのことだ。
興味のある方は下記サイトから情報を確認してみてはいかがだろうか。
BlockChainJam公式サイト

取材・編集:Rito & Rie