11月20日、Blockchain Mediaは香港にあるEmurgo HK(エマーゴ香港)のオフィスにて、アクセラレーションプログラムのディレクターであるライアン・キング氏とテクノロジーディレクターのギャレス・ヘイズ氏、プログラムマネージャーである奈緒・メイジック氏にインタビューを行いました。
ブロックチェーンメディア(以下、BCM):まず、ライアンさん自身の経歴について教えてください。
ライアン・キング氏(以下、ライアン氏):私は、アクセラレーションプログラム(Cardanoを用いた分散型アプリケーション制作の支援)のプランからローンチまでの担当責任者をしています。
以前は中国の上海に10年住んでおり、そこでいくつかのモバイルアプリの開発を行う会社を経営していました。その会社でChinacceleratorというアクセラレーションプログラムを卒業し、メンター、そしてトレーナーとして活動していました。その他にもインキュベーションプログラムの講師なども行っていました。
その後は、2年間上海にある大学で教授として務めながら、次の良いプロジェクトを構想していました。そこに、Emurgo HKのアクセラレーションプログラムの立ち上げの話をいただき、参加に至りました。
これまでずっと教育に関する分野に携わってきましたので、Emurgo HKでも教育にフォーカスして取り組んでいます。
私達のプロジェクトはCardano(カルダノ)のブロックチェーンを採用していますので、その技術についての細かな部分も教育していく必要があると考えています。
BCM:現在も多くのプロジェクトからアクセラレーションプログラムへの申込みがあると思いますが、プロジェクトの選定基準はありますか。
ライアン氏:まず1つ目として、そのプロジェクト内容は本当にブロックチェーン技術を利用する必要のあるものなのかということです。
今、ブロックチェーンはある意味ブームのようなものになりつつありますが、それに便乗するのではなく、技術的に必要であるか否かを確認しています。
また、合わせてなぜ他のプラットフォームではなく、Cardanoを利用するのかということも重要視しています。
もちろんアプリケーションを通して、Cardanoを拡散させることを目的としていますので、Cardanoのエコシステムに貢献が出来るかどうかは最も重要な基準だと考えています。
2つ目は、そのプロジェクトが掲げる問題は何か、その問題は本当に解決すべきものなのかということです。
加えて、そのソリューションによって問題の解決がされるのか、そもそもそのソリューションはマーケットからの需要があるかどうかということを選定の基準に置いています。
この業界は日々変わりやすいので、プロジェクトを長期に渡って進めていけば、ロードマップに変更が出ることは仕方のないことです。
重要なのは、その中でプロジェクトとして取り組んでいた問題解決から大きくずれてしまったり、本質が異なってしまう事が無いようにすることであり、その為には非常にシンプルなことですが、予めしっかりとしたリソースや事業計画が細かく決められているということが大切だと考えています。
その他には、取り扱う業界の分野についても注目しています。
中でも『Logistics(物流)』『Legal(法律)』『Finance(金融)』はブロックチェーンが最も活用しやすい分野です。
そして、香港はまさにLogisticsやFinanceの拠点となり得る地域ですので、ここでやることには大きな意味があると考えています。
また、私たちはより多くの人にEmurgoやCardano、ADA(エイダ)を知ってもらうことを望んでいますので、エンターテイメントの分野もよいと思います。
例えば、映画や音楽などを視聴するために多くのユーザーがスマートフォンにCardanoのアプリをダウンロードすることで、多くの人に知ってもらうことが出来ると思います。

アクセラレータプログラムディレクターのライアン氏
BCM:ありがとうございます。IronX(アイアンエックス)についても教えていただけますでしょうか。
ライアン氏:IronXは取引所ですので、テクニカルセキュリティが重要であると考えています。
さらにユーザーにとって使い勝手が良い取引所であることにフォーカスをして、コンサルティングを行っています。
ですが、一番大切にしているのは、多くの取引所が存在する中で他としっかり差別化する為のプロモーションです。
IronFXは元々トレーディングプラットフォームを扱っていますので、既存のユーザーは新たにアカウントを作成することなく、FXに加えて暗号通貨の取引を始めることが出来ます。
FXのユーザーは暗号通貨を、暗号通貨のユーザはFXを簡単かつ円滑に始めることが可能です。
BCM:香港で行なっている活動について教えてください。
ライアン氏:香港の法人は2月に設立したばかりで、こちらではコミュニティを育てるということをメインに行なっています。具体的には、教育面・ソーシャル面に力を入れたイベントを月にそれぞれ1度ずつ開催しています。
教育面では、専門家を招いてトークンセキュリティの話やHaskell(Cardanoに用いられているプロトコル言語)に関するmeetupを行いました。また最近では、Ledger社の方を招いて、同社のカストディアンソリューションに関するスピーチを行っていただきました。
ソーシャル面に関しては、投資家や開発者が多く参加し、それぞれがコネクトすることで、コミュニティの強化に繋がっています。
また、もう一つ行なっている活動の中に、CARDANO UPDATE SPACEというコミュニティサイトの開発があります。Cardanoに関しては多くの情報が錯綜しており、このサイトでは、プロジェクトがフェイクニュースかそうでないかといったことのチェックが可能です。
サイトには誰でも投稿が可能で、その投稿に対してコミュニティ内のユーザーが評価やフェイクニュースかどうかのフラグを立てることによって、Wikipediaのようなサイトを作っていきます。
BCM:CARDANO UPDATE SPACEについて、さらに詳しく教えてください。
技術担当 ギャレス氏:コミュニティによって構築されていくサイトのため、プロジェクトに対して評価付けを行うこともできます。スキャムかどうかのフラグを立てることで、スキャムではないかといったことが判断できるアルゴリズムによるシステムを作っています。スキャムのセクションは、注意喚起を行うことにも繋がります。
また、教育セクションでは、ユーザーが動画や記事をシェアし、さらにそれを見たユーザーはAmazonのように関連する内容の次のおすすめ動画や記事を閲覧することが可能で、あらゆるユーザーが学ぶことのできるコンテンツを用意しています。
Cardanoのエコシステムが使われているプロジェクトは全て載せられ、開発者向けの情報からエンドユーザー向けのウォレットなどの情報まで幅広い情報が載せられます。
また、Cardanoについて調べる上で、言語に関係なく、このサイトを見ることでCardanoに関する情報が全て分かるサイトを作ることは我々の目標の一つでもありますので、今後は日本語をはじめ様々な言語に対応していく予定です。
BCM:モラルのないユーザーなどの書き込みにはどのように対応する予定ですか?
ギャレス氏: 良質な投稿をしているユーザーがモデレーターになれたり、モラルに欠けるユーザーにはそれが分かるフラグを立てるといったアルゴリズムにより、オートマティックに行います。
BCM:ありがとうございます。EmurgoとEmurgo HKでは、役割はどのように異なるのでしょうか?
ライアン氏:フォーカスしている部分が異なります。
Emurgo HKは、Cardanoを使う経営者やエンドユーザーにフォーカスしています。私たちは自らのミッションをABCと呼んでおり、AはAccelerate(アクセラレート)、BはBuild(ビルド)、CはConnect(コネクト)を表します。
Accelerateは、アイデアや技術のあるスタートアップにフォーカスし、支援していきます。Buildは構築を意味し、Cardanoに関係するものを使う際に、より使いやすくするためのツールを作ることにフォーカスしています。その一つに先ほどお話したIronXもあり、そこではエクスチェンジをしやすくするということにポイントを置いています。そして、Connectでは、アイデアがある人と、開発者、投資家を繋いだり、meetupに限らずオンラインコミュニティの形成などを行なっています。
一方で、東京にある皆様がご存知のEmurgoのチームでは大企業やICOコンサルティングにフォーカスしており、東京と香港のそれぞれが異なる部分のスペシャリストとなることで役割が分かれています。
取材中は終始和やかな雰囲気で進み、ライアン氏の人柄の良さと、Emurgo HKの魅力がより一層見えたインタビューとなった。
また、Emurgo HKが進めるCardanoプロジェクトは、日本でも非常に認知度が高いプロジェクトであり、ファンも多い。
そのため国内でも多くの情報が錯綜しており、日々多くのフェイクニュースが出回っているようだ。
今回、ライアン氏が紹介してくれた『CARDANO UPDATE SPACE』は、そんなニュースに真偽をつけるための重要な判断材料になることだろう。
今後は日本に限らず、様々な言語の対応を行う予定とのことで利用ユーザーの拡大が期待される。
Emurgo HKの詳細
Emurgo HKに関する情報は、以下からご覧いただけます。
CARDANO UPDATE SPACE:https://cardanoupdate.space/
公式Twitter(英語版): https://twitter.com/emurgohk
公式Twitter(日本語版): https://twitter.com/emurgohk_jp
公式Facebook: https://www.facebook.com/EmurgoHK
取材・編集:Hiro & Aya & Rie