【プロジェクトインタビュー】TECHFUND Inc.

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11月某日、BlockchainMediaは株式会社TECHFUNDの共同代表CEOである川原 ぴいすけ氏とディレクター米山 怜奈氏にインタビューを行った。

株式会社TECHFUNDとは

株式会社TECHFUNDは、「起業家をメジャーな職業にする」というビジョンの元に2014年10月9日に設立され、スタートアップの支援を行っている。
資金投資ではなく技術を投資する「技術投資」と言う世界初の仕組みで、これまで250以上のチームのメンタリング及びデューディリジェンスに携わっている他、6社への技術投資も行っている。

また、今年の6月には、ブロックチェーンアプリケーション開発を支援する『ACCEL BaaS(Blockchain as a Service)』のベータ版のリリースを行い、1.2億円の資金調達を達成。
さらに今年の10月には、国内初のICO/STOアクセラレータープログラム『ACCEL PROGRAM for ICO/STO』を発表し、大きな注目を集めた。

 
ブロックチェーンメディア(以下、BCM):まず、ぴいすけさんの経歴とブロックチェーンに携わったきっかけについて教えてください。
川原ぴいすけ氏(以下、ぴいすけ氏):私自身、18歳の頃から起業家として活動し、25歳の時にTECHFUNDを立ち上げました。
当時からスタートアップへの支援を行っており、さまざまな企業と携わるうちに1対1の支援ではなく企業が資金調達を円滑に出来るプラットフォームを提供することがより良いのではないか、と考えました。
その方法を模索していた時にICOという資金調達の方法を知り、その基盤となっていたのがブロックチェーン技術だったため、それをきっかけに興味を持ちました。

また、ICOを行うということはトークンを発行するということであり、そのトークンをサービスに組み込むためにはブロックチェーンアプリケーションの開発が必須となります。
しかし、現在のICO市場では、プロダクトデリバリー出来ていないプロジェクトがほとんどというのが現状であり、そこを補うためのサポートが必要であると考え『ACCEL BaaS(Blockchain as a Service)』の開発に至りました。

BCM:スタートアップ企業をプログラムで支援する際に、企業の選定基準はありますか。
ぴいすけ氏:選定基準として定量と定性があり、そのスタートアップがソーシャルでどのくらいのインパクトがあるか、影響度があるか、詐欺性はないかをクローリングして精査しています。クローリングによって案件をピックアップした後に、細かく分けられた項目を定性チェックしています。
ソーシャルでのクローリングは、人工知能(機械学習)を利用しています。
具体的には、オンライン上でのプロジェクトの評判などの情報を独自の手法で分析しています。

BCM:現在多くのスタートアップの支援を行っていると思いますが、規制が拡がる日本でどの様にICO、STOが拡大していくのが良いと考えますか。
米山怜奈氏(以下、米山氏):これまでの資金調達の方法は、エンジェル投資家もしくはベンチャーキャピタルに支援をしてもらうかのどちらかの方法しかありませんでした。
ですがICOという柔軟な新しい資金調達の方法によって、起業家が構想する良いサービスやプロダクトに対して世界中から資金を調達することが出来るというコンセプトが生まれ、昨年は爆発的に市場が盛り上がりました。
しかし、それに便乗した詐欺案件や、取引所に上場した途端にトークンの価格が急落するケースが多数発生したことにより、現在ICOは、起業家、投資家双方にとって不安要素の多いものとなっています。
海外では、投資家も起業家も、従来の金融関連法に則って行われるSTOに関心がシフトしています。日本においても、投資家保護の観点に配慮しつつトークンによる調達を適切に実施する仕組みを整備していく必要があります。

ぴいすけ氏:これは個人的な見解なのですが、ICOとSTOは使い分けが必要であり、ICOはアーリーアダプターの獲得に使われるマーケティングや、サービスをブラッシュアップするためのバウンティプログラムなどの1つの手段となっていくのではないかと考えています。
それに対してSTOはイグジットや本質的な会社の成長を考えるならば最善の方法だと思います。STOはファイナンス・ICOはマーケティングという切り分けがされていくのではないでしょうか。

インタビューに答えてくれた川原ぴいすけ氏

BCM:ありがとうございます。先月発表された『ACCEL PROGRAM for ICO/STO』についてもお伺いできますでしょうか。
ぴいすけ氏:まずは日本のスタートアップに向けて説明会などを行って発信をしています。プログラムのゴールとしてトークンオファリングをすることを掲げていますので、そのために投資家とのコネクションを作っています。

投資家の方々は精査されたプロジェクトを望んでいるので、詐欺性の高いICOだからこそこういったアクセラレータープログラムというのは需要が高いのではないかと思います。

BCM:実際にICOを行う段階になった時、現在だとどの辺りの国でICO・STOを行うことを考えていますか。
ぴいすけ氏:やり易いというのも重要ですが、本社を日本に置くプロジェクトが海外でオファリングする場合には、あまりにも遠くの国では経営の連携が難しくなりますのでなるべく距離が近いことが重要になります。そういったことも含めて現在はシンガポールなどが良いと思います。

また、最近では、香港のファンドやベンチャーキャピタルとの連携も増えており、今後は香港なども視野に入れていく予定です。

BCM:『ACCEL BaaS』はどのように活用されるのでしょうか。
ぴいすけ氏:ACCEL BaaSはERC20ベースでのトークン発行が可能で、項目はテンプレート化されているので、誰でも簡単にトークンの発行・セールスを行うことが出来ます。
今後は、ACCEL BaaSのクラウドセールの機能と投資家のネットワークを繋ぐプラットフォームの提供も予定しており、トークンセールスがよりスムーズに行えるようになります。トークンについてはACCEL BaaSで全て完結させることが出来ますので、私たちのサービスによってトークンオファリングをトータルサポートすることができます。

BCM:ありがとうございます。最後にブロックチェーン技術を活用するにあたって、注目している業界はありますか。
ぴいすけ氏:ブロックチェーン技術は、健全性を担保するための方法になり得ると考えています。
例として、エンジニアやクリエイターの人材会社の手数料やブラックボックス化しているギャンブルの業界などがあります。
ギャンブルで言えばゲームの公平性がないためにユーザーが減少し、市場規模が下がっている(※1)のが現状です。この見えない部分をクリアにすることが必要で、そのためにブロックチェーン技術を活用するのが良いのではないかと考えています。
※1:『レジャー白書2018』(公益財団法人日本生産性本部余暇創研発行)

米山氏:私は医療業界への活用に期待しています。
まず、膨大な量のデータをより安全に管理することができるようになると思います。加えて、世界中の研究者や医療機関、製薬会社等が医療データや臨床例等を個人が特定されない形で適切に参照・共有することができれば、他の国で実施されている治療方法を医療や製薬開発に取り入れることも可能になると思います。
患者も、より自分にふさわしい治療を選択できるようになるかもしれません。

 
取材の中でぴいすけ氏は「ブロックチェーン技術はあくまでも目的を果たすための手段」と述べた。
TECHFUNDは設立当初から掲げている通り、スタートアップへのより良い支援・サービス提供のために、ICO・STOでの資金調達が最善であると考え、その基盤となるブロックチェーン技術を活用している。

また、現在既に多くのプロジェクトの支援を手掛けており、そちらにも注目が集まっている。
今後も多くの新たなスタートアップ企業がTECHFUNDの支援を受け、世の中に展開されていくことだろう。

 

取材・編集:Hiro & Rie