2月27日、ANAインターコンチネンタルホテル東京にて一般社団法人トークンニュースブロックチェーン評議会が主催する『Fintech Economy Summit』が行われた。
本イベントはBlockchain EXEや、以前当メディアでも取り上げたBINARYSTAR株式会社などが共催しており、各企業から多くのゲストスピーカーが参加した。
Fintech Economy Summitの開催目的
まず最初に、主催の一般社団法人トークンニュースブロックチェーン評議会 理事長である佐藤弘昌氏から、挨拶と本イベントの目的が語られた。
佐藤氏は「ブロックチェーンの仕組みは多くの人が参加することで発展していくだろう。」と前置きしたうえで、ブロックチェーン業界の今後の課題について語った。
それは、暗号通貨による損失や、ハッキングなどのニュースなどが多く取り上げられたことが大きな原因です。
しかし、そのような黎明期を経て、少しずつ発展期を迎えています。
本イベントは、発展期を迎え、今後参加者が増えていく中で、個々が正しい知識を持ち、業界を正しい方向へ成長させるための足掛けとしてほしいと考えています。
また、佐藤氏は団体について「まずは、健全な発展を担うために、社会に対して献身的かつ貢献的な活動が必要だと考えており、その活動を後押しする。」とも述べた。
暗号通貨とIoTのセキュリティの課題とブロックチェーンの活用
一番初めにプレゼンテーションを行ったのは、株式会社レオンテクノロジーの代表取締役である守井浩司氏。株式会社レオンテクノロジーは、ホワイトハッカーの集団であり、インターネットセキュリティ専門会社である。
守井氏は、暗号通貨とIoTの現状のリスクと、今後の課題について語った。

株式会社レオンテクノロジー代表取締役 守井 浩司氏
2017年、2018年に日本では多くのハッキングが事件として取り上げられたが、今年はハードフォークに伴うセキュリティリスクの拡大や、ハッカー組織によって企業やソフトウェアの買収が行われる可能性があるという。
実際に、過去にハッキングで得た資金の使い道として、Webサイトの買収が行われているそうだ。
これにより、新規参入してくるユーザーにとっては正しい情報の取得が難しくなり、かつ、今以上に、自身の資産を守るためのセキュリティをしっかりと構築する必要がある。
また、IoTについても医療を具体例として挙げ、現状で考えられるリスクについて説明した。
例えば、IoTを活用して記録データを送受信する際に「デバイス(センサー)の安全性」「データサーバーの安全性」「通信データの安全性」の3つが成立していることが前提となる。
しかし、全ての安全性を担保し続けることは困難であり、リスクの1つであるとされている。
この問題に対して、通信とソフトウェアの観点から見たときに、データの保全や証明としてブロックチェーンが利用され、リスクの軽減に役立っていくのではないか、と述べ、今後の業界の広がりへ期待を寄せた。
その後のプレゼンテーションでは、株式会社EMURGOの副社長である吉田洋介氏から『STOがもたらす未来について』、BINARYSTAR株式会社のアドバイザ-・インキュベーションマネジャーである赤羽雄二氏による『ブロックチェーン技術の導入例』など、それぞれの視点から見たブロックチェーンを取り巻く環境について語られた。
ブロックチェーンの実装と課題について
次に行われたのは「ブロックチェーンが築く経済圏」と題したパネルディスカッション。
モデレーターは株式会社博報堂の伊藤佑介氏が務め、実際にブロックチェーン技術の実装に取り組んでいる企業からゲストを招き、ディスカッションがなされた。
実際に、ブロックチェーンを活用するにあたって課題となっている点について問われると、株式会社日立製作所の齋藤氏は「ブロックチェーンはこれまでのビジネスモデルと異なった考え方を持って組み立てなければならない。ここをまず経営層に理解をさせることが第一の課題となる。」と現状を語った。
また、最初はブロックチェーンの研究は業務外の活動として取り組んでいたそうで「たまたま社内にブロックチェーンに関心を持っていた人間が数名いた。どの企業もそうだが、特に大きな組織では新しい取り組みというのは浸透までに時間がかかる。」と大企業ならではの苦労も明かした。

写真左から伊藤氏、石黒氏、石川氏、齋藤氏、町氏
さらに、Enterprise Ethereum Allianceの石黒氏は「企業の多くは、トークンやブロックチェーンを使って何かをしたいと考えているが、実際に何が出来るのか理解していないことの方が圧倒的に多い。」と述べ、社会への実装化が進まない原因の1つとして、現状のブロックチェーン技術の認知と理解度が不十分であることを挙げた。
次に「ブロックチェーンと何かを掛け合わせた【ブロックチェーン×〇〇】というテーマについてどう感じているか。」という質問に対しては、パネリストの全員が、現在存在する技術と掛け合わせることで価値が大きくなるのは間違いない、と答えた。
中でも石川氏は「ブロックチェーンを使って何かをしようと考えるのではなく、こういう社会を実現したいから、その為にブロックチェーンを活用する、と逆算して考えることが重要」と語った。
一方で「トークンエコノミーはまだ動いていないもの」と意見を述べたのは町氏。
「技術的に出来ることよりも、現実に起きている人々の行動などに照らし合わせた活用方法の方が、ユーザーから喜ばれるのでは。もちろん今後、技術的に拡大して新しい発展を遂げるべきだとは思うが、まずはユーザーが必要としているものを今の目線から考える必要があると思っている。」と自身の見解を示した。
その後も『注目するトークンエコノミーサービスについて』や『実際に社会実装してみて気付いたこと』など多くのテーマについて各自の目線から意見が語られ、非常に盛り上がりを見せたディスカッションとなった。
イベントは平日の昼間の開催であったにもかかわらず、スタートから多くの参加者が集い、熱心にプレゼンテーションに耳を傾けていた。
また、プレゼンテーションの合間には登壇者と参加者が名刺交換や意見交換をしており、交流も多くみられた。
本イベントは引き続き開催される予定との事で、今後ブロックチェーンに参加するコミュニティや企業が増えるにつれて、需要も高まっていくことだろう。
発展期を迎えたブロックチェーン業界が今後どのように成長するのか、非常に楽しみである。
取材・編集:Rie