他には、Blockstack(ブロックスタック)やHarmony(ハーモニー)といった海外プロジェクトのメンバーも登壇した。
Harmonyのジョン・ウィトン氏は、Harmonyは人間のためのブロックチェーンであり、誰でも使えるブロックチェーンを目指すと語った。
Harmonyの代表的なゲームにPangaea(パンゲア)があり、これは数千のノードをたてて開発されたという。また、ここでは、96の国々から3500ものサインアップがあり、ほとんどの人が初めてのノードを経験したとのことだ。
Harmonyはプライバシーが重要な項目とされ、Deep Shardingという技術を使ったとのこと。また、Harmony Protocolは、devconにて無料でアクセスできるAPIを発表するとのことだ。
Blockstackからは、ザン・ディトコフ氏が登壇した。
ザン氏は、Web3.0をユーザー中心のWebと表現した上で、彼らはグーグルが以前モットーとしていた「Don’t Be Evil(邪悪になるな)」を文字って、「Can’t Be Evil(邪悪になれない)」というキャッチフレーズを掲げていると述べた。
同社は、ブロックチェーンやスマートコントラクトを使う上でのベストプラクティスを持っていることをチームの強みとしている。
Blockstackは、分散アプリケーションのための新しいインターネットを目指しており、BlockstackのAPIを用いることで、アイデンティなどの管理ができるという。Blockstackにアイデンティを登録して得られるものとしては、「人の目でわかるID(アイデンティ)を得られること」「AWSやgoogleドライブにある資料を暗号化させて保管できること」が挙げられ、これによりあらゆる資産をデジタル上でやりとりすることが可能となる。
Blockstackは、開発者が簡単に使えるようなものにしており、開発者はその使い方を1時間ほどで学べるようになっているとのこと。
今後の更なる拡大が期待される。
ブロックチェーンの今後の発展と課題
後半部では2つのディスカッションが行われた。
ブロックチェーンプロトコルとプラットフォームの未来とは
一つ目のテーマとして挙げられたのは「ブロックチェーンプロトコルとプラットフォームの未来とは」。
モデレーターはFinMiraiジェネラルパートナーのNorbert Gehrke氏が務め、実際にブロックチェーン技術の実装に取り組んでいる企業からゲストを招き、ディスカッションがなされた。
まず始めに今日多くのプロジェクトやプラットフォームが増加し続けている中で、どのようなプラットフォームが実用化されていくか、と問いかけられると「それぞれが解決したい問題が異なる為、いくつかのプラットフォームが必要となるのは必然だが、残るのは少数。」と述べたのはIBM Japanの平山毅氏。
また、EMURGOジャパンの吉田洋介氏も、マルチなプロトコルやブロックチェーンが残るのは同意見としたうえで「拡張性、永続性、運用性の3つの課題をいかに解決出来るかが重要になるのでは。」と見解を示した。
さらに各国の法規制が定まっていない現状ではパブリックブロックチェーンよりもプライベートブロックチェーンの方が実用化が容易であるため、パブリックチェーンの普及にはまだまだ時間がかかるのではないか、と今後を予測していた。

IBM Japanの平山毅氏(左から2番目)
では今後ブロックチェーンはどのように普及していくのか。
この質問に対してパネリストのほとんどが「企業単体での取り組みではなく、業界全体で乗り出すことが重要となる。」と語った。
ブロックチェーンの教育や実用化へのアドバイスを行っている吉田氏は「社内システムをブロックチェーンに置き換えたい、としたときに一企業単位での置き換えに大きなメリットは少なく、業界全体が移行して初めてブロックチェーンが十分に活用され、ビジネス化が可能となるだろう。」と自身の視点からの見解を述べた。
一方でSBI R3 Japanの山田宗俊氏は「一番の問題はエンドユーザーがブロックチェーン活用後の世界を想像することが難しいところにある。」と前置きし、これまで社内サーバーなどで情報の一元管理を行っていた日本企業の多くが『ブロックチェーンを活用して情報を分散管理すること、必要部分はトランザクションを繋いで共有していく』という感覚を正しく理解していくことが必要であると語った。
また、現状のブロックチェーンのテクニカルで一番難しいのはネットワーク上に台帳が1つしかないことであり、一番最初にどの台帳を基とするのか見極めることも合わせて重要視すべきと付け加えた。
日本とアジアにおけるSTOの展望
次に行われたのは「日本とアジアにおけるSTOの展望」というテーマでのディスカッション。
こちらにパネリストとして登壇したのは、レヴィアス株式会社CTOの河崎純真氏とBINARYSTAR株式会社のインキュベーションマネージャーである井垣孝之氏。
モデレーターはTECHFUND共同創業者CEOの松山雄太氏が務めた。
今後STOが発展する業界はどこか、という質問について、「不動産や証券などすでに法整備がしっかりとされた古い業界や、レガシーな業界と相性が良いと思う。」と語ったのは河崎氏。
しっかりと法規制が整った業界だからこそ新たな資金調達方法として今後広く活用されるのではないか、と述べた。
それに対し、井垣氏は「特定の業界ではなく、ビジネスモデルが重要になる。」と語った。
STOはマーケティング要素が非常に強く、そのプロジェクトやサービスへ強く共感してもらうことで大きな金額の資金調達が可能となる。加えて、STOの際に発行したトークンを提供サービスに利用できることも重要なポイントになるそうだ。

左からTECHFUND松山雄太氏、BINARYSTAR株式会社井垣孝之氏、レヴィアス株式会社河崎純真氏
これまでに資金調達方法として普及していたICOやIOと比較したSTOの大きな違いは『投資家保護と法規制の厳しさ』だという。
ICOは不透明性が多くても投資家の希望があれば、資金調達が可能であった一方で、STOはプロジェクトの概要や会社情報・進捗情報などを開示することが必要となる。投資家はそれらの情報から判断したうえで、資金の提供を行うか否かを選択することが出来る。
また、今後日本でSTOを行うメリットや障害についての質問も挙がった。
まず、日本では今年の4月に改正金商法が公布され、来年の4月に施工される予定である。
その法案が施工されることにより、有価証券を電子的に移転する場合(電子記録移転権利)に第一種金融取引業者のライセンスを持っていることが条件となる。つまり現行では証券会社のみが取り扱い可能な内容となる。
ただし、例外もあり、ある特定の条件の場合は第二種金融取引業者のライセンスでも取扱が可能とすることを検討している。
例外の指定条件については、現在議論中で明確な基準は決まっていない。
「今後日本企業がSTOとブロックチェーンをどれだけ早く活用出来るのかが鍵となる。」と語るのは井垣氏。
STOを活用することで、これまで狭い対象で行われていた資金調達を幅広く行うことが出来るほか、合わせてサービスの見込み客の確保も可能となる。
河崎氏も「現在はSTOを利用するメリットとデメリットは見え辛いが、今後国際規格化されるなど世界としての基準がしっかりと設定されれば、日本・海外それぞれで行われるSTOをブロックチェーンを通して繋ぐことが可能となるだろう。」と語る。
つまり世界中のどこでSTOを行ったとしても、サービスをそのまま世界中のグローバルマーケットに参画させることが可能となる。
日本では、まず、大企業がこの流れを取り入れ、3~4年程かけて少しずつ広がっていくだろうと見解を述べた。
その後も『国外のSTOの現状』などいくつかのテーマについて各自の目線から意見が語られ、非常に盛り上がりを見せたままディスカッションは終了した。
イベントの最後には、Infinity Blockchain Labs社CEO、そして今回のイベントを主催したBINARYSTAR株式会社のCEOも務める山本純矢氏によるプレゼンテーションが行われ、ブロックチェーンを活用した事業創造の課題について語った。
山本氏は「ブロックチェーン技術は発展期を迎え、様々な業界で実証実験が行われているにもかかわらず、多くはサービスの仕組みや経済圏が分断してしまっていることが原因となり、実装化へ進めない現状がある。」と述べた。

BINARYSTAR株式会社CEOの山本純矢氏
ではブロックチェーンビジネスをいかに伸ばしていくのか。その為には共通のプラットフォームを提供することから始めるべきだという。
例えばユーザーの支払いの仕組みや環境を整えること、クリプトを気にせず使える経済圏の仕組みなどが必要とされ、山本氏が代表を務めるInfinity Blockchain Labsでは自社サービス『Infinito App Square』『Infinito Wallet』などを組み合わせ、ブロックチェーンサービスの収益モデルとしている。
その後も、実際の現場の視点から見た意見を交えながらブロックチェーンビジネスモデルの立ち上げの難しさについて語り、プレゼンテーションを締めくくった。
プログラム終了後は、懇親会が行われ、多くの参会者が登壇者達との交流を楽しんでいた。
朝早くからのスタートにもかかわらず、最後まで大きな盛り上がりを見せた【UNBLOCK TOKYO】。
プログラムによっては立ち見の参加者が多く出るなど、プロジェクト側だけではなく参加者側もブロックチェーンへ大きな関心を持っていることが伺えた。
株式会社BINARYSTARでは引き続き、毎月ブロックチェーンに関する講演やイベントを行っていくとのことで、今後ブロックチェーンに参加するコミュニティや企業が増えるにつれて、需要も高まっていくことだろう。
取材・編集:Hiro・Rie